映画館のオリジナル規格についてご存じでしょうか?
映画館には様々な音声フォーマット、上映システムなどがあり、その中には映画館が独自に出している名前の付いたシアターや設備であるオリジナル規格があります。
今回は、オリジナル規格について解説していきます。
オリジナル規格とは?
オリジナル規格は前回記事で紹介した「THX・IMAX・ドルビーシネマ」と異なり、運営する映画館側が独自に決め、指定を満たしたシアターの設備やシアターそのものの事を指します。
はっきりとこれを使うと表記されている物もあれば具体的な数字などがない物もあります。
会社で言えばTHXなどがISO、オリジナル規格は社内独自の決め事みたいな感じです。
オリジナル規格にはどんなものがある?
全てを列挙すると数が多くなってしまうので代表的な物を。引用は、映画館の公式ページより抜粋した解説になります。
HDCS
シネプレックス独自の規格。シネプレックスの一部劇場に導入。大型サラウンドスピーカーに増設されたサブウーハー、楔型の吸音材が設置されたシアター。
最高級のスピーカーシステムとパワーアンプを組み合わせ、さらに映画館では世界初の使用となる、特殊な楔形の吸音設備を設置することにより、想像を超えた大迫力の音響と、透き通るような繊細な音響を皆様に提供します。
ユナイテッド・シネマ水戸HPより
ULTIRA
イオンシネマ独自の規格。壁いっぱいのスクリーンに高域・中域・低域を絶妙にコントロールしたサウンド。
息を呑む大スクリーンと鮮明映像・・・そしてシアターいっぱいに響き渡る立体音響。まるで映画の中に入り込んだような感覚が広がります。
イオンシネマHPより
BESTIA
シネマサンシャイン独自の規格。壁いっぱいのスクリーンにイマーシブサウンド、4Kレーザープロジェクターの導入されたシアター。
“BESTIA(ベスティア)”それは、次世代の映画館フォーマット。最新鋭のレーザープロジェクションシステムと、3D音響が一体になることにより、観客がまるで映画の中に入ったような感覚を生み出します。
シネマサンシャインHPより
TCX
TOHOシネマズ独自の規格。壁からいっぱいのスクリーンに加え、椅子やスクリーンの周辺を暗い色に統一して映像に没入することが出来る。
実物大のマッコウクジラが入る、超巨大スクリーン。迫力ある映像に没入できる映画鑑賞を提供致します。
TOHOシネマズHPより
その他
上記で紹介したオリジナル規格は、一例でしかありません。
オリジナル規格は他にもあります。個別の解説は後々書いていければと思います。
劇場独自の規格ゆえ似ている物やはっきり区別されていない物もある。
クリアで、繊細で、大迫力の、映画の中に入ったような・・・似たような文言が並びます。映画館にあまり行った事のない人からすると
「どれで見たらいいのか分からない。違いが分からない。」
と思っても無理がありません。
THX、IMAX、ドルビーシネマの場合、それぞれ決められた指定を守らなければなりません。
THXは制作側の意図を再現する為規定以上のものが求められます。IMAXとドルビーシネマはそれぞれの効果を正しく発揮するための指定が入ります。
この指定をしておかないと低いクオリティのシアターに自社の看板を掲げるわけですから厳しくもなるわけですね。
オリジナル規格の場合、この指定を映画館側が自由に設定出来、後から変更する事も出来てしまいます。
「他の映画館ですでに導入されているシステムではあるけどスクリーンを大きくして椅子を豪華にして名前をつけよう。」
とか
「最新の音響設備と映写設備があるから場内デザインを派手にして規格にしよう。」
とかでも通ってしまうわけです。
指定を後から変える例として、
「今までA社の〇〇スピーカーを使うことが決まってたけどB社の安いスピーカーに変更しよう。劇場紹介の文章もちょっと修正しよう。」
具体的な大きさに対する数字を決めない例として、
「同じ系列の名前付きのスクリーンより5mも小さい。けどメインのシアターでスクリーンも両端まであるから名前付きにしてしまおう。」
なども通るわけです。劇場が独自に出している規格だからこそ自由度が高い反面、同じ名前を冠するオリジナル規格でも顕著な差があったりするわけです。
映画館比較:TCX
上の写真がTOHOシネマズ日比谷シアター5・TCX。
下の写真がTOHOシネマズひたちなかシアター5。
スクリーンサイズはほぼ同じ。どちらも壁いっぱいのスクリーンですがひたちなかはTCXではありません。
映画館比較:HDCS
シネプレックスのHDCSも劇場毎に規模、デザイン、使用する機材が変わっています。
上の写真がシネプレックス幕張のシネマ9。
下の写真がユナイテッドシネマ水戸(旧シネプレックス水戸)のシネマ8になります。
シアターの規模、デザイン、使用機材が異なりますがどちらもHDCSです。
オリジナル規格の例。違いはある?
〇例1:
ドルビーサラウンド7.1対応、4Kデジタルプロジェクター、端から端までのスクリーンのオリジナル規格Aがあったとします。
この映画館は全部の映画館が端から端まで目いっぱいのスクリーンだったとします。ドルビーサラウンド7.1と4Kは対応作品でなければ5.1ch、通常の2K 解像度です。
さて、この規格Aで5.1ch・2K作品を上映した場合、他の名前のないシアターと違いはありますか???
ずばりシアターの大きさによる聞こえ方や見え方の違いはあっても上映スペックとしての違いはありません。
例として挙げたこの規格Aはスピーカーやスクリーンについて明記されていないので他のシアターと同等の物を使用していたら最新の上映方式に対応出来る普通のシアターというだけになってしまうわけです。
〇例2:
〇〇社製スピーカーシステム採用、△△社製パワーアンプ採用、ドルビーアトモス対応のオリジナル規格Bとドルビーシネマでドルビーアトモス作品を見比べたとき、「ドルビーアトモス」の効果に差があるか?
ずばり、メーカーによる音色の違い、規模やスピーカー台数による微妙な違いがあったとしてもドルビーアトモスの効果に違いはないです。
オリジナル規格で見たから比較にならない程すごいというのは実は多くないです。
5,000席のホールで使えるアンプ、ハイパワーなスピーカーなどの文言から脳内補正をかけている場合もあります。
しかし言葉一つでクオリティが上がったと感じるのならば劇場の宣伝の仕方ひとつで普通のシアターがハイクオリティなシアターになるわけです。
オリジナル規格の宣伝内容が似てくるのも頷けます。
5.1chで見た作品をドルビーアトモス対応のオリジナル規格で見て全然違うというのはドルビーアトモスによるところの差が大きいでしょう。
ただオリジナル規格は劇場の顔として見えない部分にも力が入っていてそれが音や画に表れていることがあります。
また「ドルビーシネマとオリジナル規格でアトモス聞いたけどオリジナル規格の方がすごかった。」
という感想を見かけます。何がどうすごいと感じたかは個人の感覚にはなりますが、前述した様にここにドルビーアトモスの差はありません。
なのでこの場合
「ドルビーシネマとオリジナル規格でアトモス聞いたけどオリジナル規格の音が好みだった。」
って事になるんです。日本語の難しい所ですね。
オリジナル規格の劇場は名前やデザインも凝っているものが多いので特別感からよく感じるという事もあります。
逆を言えばオリジナル規格の名称がなくてもハイクオリティなシアターもあります。
まとめ
・オリジナル規格はその映画館独自の指定に基づいたもの。
・他と比較した時、実はあまり違いがないものもある。
・使用しているスピーカーや見えない部分での違いから差があっても好みの問題。
・名前やデザイン・雰囲気などの付加価値が魅力の1つ。
オリジナル規格はメインシアターと合わせてその劇場の顔でもあります。
雰囲気を味わいつつ、気楽に楽しむのがいいと思います。
オリジナル規格やIMAX、ドルビーシネマなど名称のついたシアターに限らず様々な映画館を楽しむのがいいでしょう。
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