映画館にあるいろいろな上映方式やシステム。オリジナル規格というものを含めるとかなりの数になります。
目当ての作品が様々な名称のシアターで上映されるとどこで見たらいいか迷ってしまいます。
今回はシアター選びの参考になるTHX、IMAX、ドルビーシネマの3つについてざっくり説明していきます。
THX
THXとは?
THXは製作者の意図を再現する為に様々な基準を満たした劇場が得られる認証の事です。
基準というのは簡単にいうとスクリーンの見やすさや響きの時間、場内の静かさといった事になります。
THXの認証を得た映画館はTHXのロゴやポスターを掲げる権利が得られ、THXのデモンストレーション(THXトレーラー)を流すことが出来るようになります。
またTHXによる定期的な監査が入り、基準値が保たれているかを確認されます。基準から外れてしまうとTHXの認証はなくなってしまいます・・・
THXは何がすごい?
THXシアターは厳しい基準をクリアしなければ得られない、じゃあ何がすごい?となると実は、
THX=すごいシアター
という事にはなりません。
使用されている機材はTHX認定の物である事が必須ですが一般的な映画館にも同等の機材が入っています。ラインナップ的に普通に使うんです。
場内の環境も今は昔と異なり大幅によくなっています。今流行りの壁から壁まであるようなスクリーンは別としてスクリーンも大きく見やすい所がほとんどです。つまりは、
THX認定が得られるようなシアターがかなりある
という事です。
それでも認証を受けていないシアターが大半なのはTHXの認証にお金がかかること、THXにこだわらなくても映画館のクオリティが底上げされた事で認証を掲げるメリットがなくなってしまった事が挙げられます。
またTHXトレーラーは見ごたえがあるのでこれが見れるという事の価値が非常に大きいとも言えるでしょう。THXのシアターは追加料金はありません。
THX認証のシアターで非常に話題になっているイオンシネマ海老名(@神奈川県 海老名市 小田急線・相鉄線 海老名駅から徒歩5分、JR相模線海老名駅から徒歩8分)のスクリーン7番はTHXだからすごいというわけではなく、スクリーン7自体の能力によるものです。
のちに上級者編で詳しく解説したいと思います。
IMAX
IMAXとは
IMAXは一般的なシアターよりもスクリーンが大きく、大きな画と大きな音で映画を楽しめるシアターの事です。壁いっぱいのスクリーンと客席後方に設置された大型のIMAXスピーカーが特徴的です。
IMAXのある映画館は屋外やロビー、通路などあらゆる所に青色のIMAXロゴがあり、存在を強くアピールしています。
IMAXシアターではIMAXのシステムに対応した画と音が収録された専用の「IMAX版」と言われる専用のデータが使用されます。(まれに通常の素材での上映あり)
中にはIMAXカメラという非常に高額な機材を使用して通常よりも高精細、中には縦方向にさらに拡大した映像を収録することが可能です。IMAXにも専用のデモンストレーションがあって期待感が増します。
IMAXには種類があり、
- IMAX デジタルシアター
→映写機が2台。5台の大型スピーカーとサブウーハーで構成されています。 - IMAX レーザー
→映写機の性能が上がって鮮やかな色になり、スピーカーが追加されたもの。(IMAX12ch)映写機は1台。 - IMAX レーザー/GTテクノロジー
→スクリーンが縦に大きくなり、レーザーの映写機が2台、スピーカー構成はIMAXレーザーと同じ。
この他にもアトラクションやプラネタリウムもありますが今回は映画館のみに絞ります。
IMAXは何がすごい?
IMAXは音も画も大きいという認識でいれば大体合っていると思います。デジタルとレーザーの差は色の深み・鮮やかさ、通常のIMAXサウンドと12chの違いは追加されたスピーカーによる包囲感、IMAXレーザー/GTはスクリーンが縦に半端じゃなくデカいです。12chは対応作品のみになります。
またIMAXは通常のシアターを改装したものもあり、規模が小さいものもあります。基本的には大きく感じるような施工にはなっていますので気にならない人もいるかと思いますが、1度GTクラスのサイズを体験した人には物足りない人もいるかもしれません。
IMAXの料金
価格もすごいです。劇場によって多少差がありますが、IMAXデジタル・レーザーが一般料金+400~500円、IMAXレーザー・GTが+600〜700円と一般料金2000円オーバー、3D作品ともなれば更に300円〜400円上乗せ、プレミアシートともなれば2700円~3000円にもなります。
GTじゃないと完全じゃない?
IMAXはフルサイズ、GTのスクリーンの上下が完全に埋まるものが非常に注目されます。全ての映像が映されるのはIMAXレーザー/GTテクノロジーに対応した劇場だけ、しかも現在は日本には2か所しか導入されていない・・・
じゃあIMAXデジタル・IMAXレーザーじゃ楽しめないの?という事になります。
個人的な感想になりますが自分はIMAXデジタルで十分迫力を体感出来ます。
今スマホでも、PCでも、テレビでもいいので画面両端がギリギリ視界に収まるくらいまで顔を近づけて下さい。ピントが合うように中央を見ると上下左右は何か映っているのが分かってもはっきりと視認出来ません。
次は遠くの景色を見ながら手のひらを目の上下にあてて映画の映像のように指が若干はみ出す程度に上下を隠してみて下さい。
中央を見たままそのまま手を開いていくときちんと視認出来る範囲とそのさらに上下、視界には入っているが視線を動かさないとはっきり見えない範囲があります。
感覚的にはこの視界に入っていて視認出来る範囲がIMAXデジタル・レーザーの見具合、視界には入っているが視線を動かさないと見えない範囲がIMAXレーザー/GTの見具合になるかと思います。
つまりはきちんと「見える」のはIMAXデジタル、レーザーの範囲でIMAXレーザー/GTは見えなくてもそこに映像があることで感覚的な大きさによる没入感を高めている感じです。
またIMAXはほとんどがIMAX DMRという通常撮影作品のIMAX変換版と言える物がほとんどです。
全編IMAX撮影、ましてやフルサイズなんてほとんどありません。あっても部分的で画面に映る面積が大きくなったり小さくなったりすることもあります。ちょっと長くなりましたが、IMAX各種は大きめの音と映像が体感出来る、迫力のあるシアターという認識でよいでしょう。
ドルビーシネマ
ドルビーシネマとは
ドルビーシネマ(DOLBY CINEMA)は「映画館の音声についてざっくり説明」の記事でもちょっと紹介しましたが、黒で統一されたデザインにドルビーアトモスとドルビービジョンに対応出来る設備を導入したシアターの事です。
ドルビーシネマも映画館内外にドルビーシネマのロゴが掲げられます。
ドルビーシネマでの上映ですが、
ドルビーアトモス・ドルビービジョンに対応したフルスペック上映
ドルビービジョンで音声は5.1ch・7.1chでの上映
ドルビーアトモスで映像がドルビービジョン非対応の上映
があります。
フルスペック上映はドルビーアトモスによる迫力のサウンドとドルビービジョンによる鮮やかで濃厚な映像を味わう事が出来る、シアターの能力を最大に活かした上映です。
ドルビービジョンのみ、またはドルビーアトモスのみではそれぞれ非対応のものは従来のシアターと同等のスペックでの上映となります。
また、ドルビービジョン・ドルビーアトモスの両方に対応していない作品がドルビーシネマでも上映される事もあります。この場合、上映される内容は映像・音ともに従来のシアターと同等のスペックでの上映になります。
ドルビーシネマの表記
SMTサイトの場合ですが、フルスペック上映の場合チケット表記はDOLBY、ドルビーアトモスのみの場合ドルビーシネマ非対応扱いでチケット表記はATMOSになりますが、ドルビービジョンのみ対応の場合チケット表記はDOLBYとなります。
その為音声はドルビーアトモスではなくともドルビービジョンであれば現状ドルビーシネマとして表記が可能という事になります。(音声がアトモス非対応であるという注意書きもあるようですが、全てかは不明。)
ドルビーアトモスのみは別上映扱いになるのは憶測ではありますが、国内にもドルビーアトモス対応シアターがあり、同等の音響体験を得る事が出来る為明確な差別化が出来なくなる事が考えられます。
ドルビービジョン自体はドルビーシネマ専用ではなく、ドルビーアトモスと同様に通常の劇場にも導入可能な設備になりますが、現状ドルビービジョンを見る事が出来るのはドルビーシネマに限られる(国外はちょっとわかりません)事から表記もDOLBY、扱いとしてもドルビーシネマに属するものと思われます。
その為、ドルビービジョンがドルビーシネマ以外にも普及したら表記がATMOS同様にVISIONになるかもしれませんし、DOLBYのままかもしれません。
現状、ドルビーシネマでのドルビーシネマ上映・ドルビーシネマ版とされるものは
フルスペック上映とドルビービジョン上映
という事になりそうです。
ドルビーシネマは何がすごい?
ドルビーシネマはシアター入口にAVP(オーディオビジュアルパス)というものがあり、作品によっては専用の映像が用意されています。
これはオプション的なもので簡易的な物だったり、ない場合もあります。映画を見る前から映画への期待感を高める演出です。
シアター入口、シアター内は青いライティングとスクリーン以外は黒で統一。余計な視覚的な情報を排して映画に集中出来る空間に仕上げられています。
メインスピーカー他、サラウンドスピーカーは隠されていますが、一部劇場のようにトップだけは見えている所もあります。
海外にあるハイグレードなドルビーシネマの中には通常のシアターと同様フロント以外のスピーカーが見えていている、ドルビーシネマカラーの青ではなく赤のライティングになっているシアターもあります。
なのでドルビーシネマはドルビービジョンとドルビーアトモスに対応出来る設備が必須、場内の施工には多少の違いはあれど映画に集中しやすい空間であるという事になりますね。
ドルビーシネマもデモンストレーションがありドルビーシネマの解説がありますが、フルスペック上映であればドルビーアトモスによる自由自在な音の表現とドルビービジョンによる深い黒と鮮やかな色を集中出来る空間で見れる環境であるという事です。
ドルビーシネマ版と他のシアターのドルビーアトモスとで収録されている音の差はありません。今後ドルビービジョンのみに対応した映画館が出てきたとしてドルビーシネマとのドルビービジョンとしての収録されている映像の差はないという事でもあります。
日本にはドルビーアトモスに対応しているシアターは多くないのでドルビーシネマは最新の映像と音が楽しめる設備を有するシアターという事になります。
ドルビーシネマも追加料金がすごいです。基本料金+ドルビーシネマ非対応の場合+200円、ドルビーシネマの場合+500円、ドルビーシネマ・3Dの場合+900円となります。IMAXと同じくなかなかの金額ですね。
ちなみにフルスペック上映以外は現状、SMTが非対応作品は一律プラス200円、T・JOYがドルビーアトモス料金としてプラス200円と明記しています。
まとめ
- THXは、THX認証であり、極端な違いはないが見ごたえあるTHXのトレーラーが見られる。
- IMAXは、個体差があれど迫力重視の大きい画面と大きい音が体感出来る。
- ドルビーシネマも個体差があれどフルスペック上映は深い黒と自由自在な音を体感出来る。
という感じです。ゆくゆくは中級向けとしてそれぞれを解説出来れば、と思います。
ちなみにどれが一番いいの?と思う人が多いかもしれませんが正直言って好みです。近くにIMAXやドルビーシネマがなくても悲観することもありません。
自分もたまにしか利用しませんし、近場にTHX、ドルビーシネマはありません。これらは映画の価値を高めるものであったとして、他の映画館が映画の価値を下げるものではないからです。
特に名前のないシアターにもとてもいい所がたくさんあります。追加料金の金額の高い・安いも個人の主観によるでしょう。
映画館初心者の方も気楽に映画館を選んで、気に入ってもう一回見てみたい!となった時、違うところに入ってみるのがいいと思います。映画も映画館も楽しんで選びましょう!
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